起床。することがないのでまだ行ったことのない国立博物館へ。去年行ったカンボジアの国立博物館が素晴ら しかったせいである。一回りして出てきて、「けっこうゼンゼンたいしたことないやん」と憎まれ口を叩きそうになっ たところで気が付いたが、20以上ある展示館のうち、最初の一つを見ただけでした。すみませんでした。
んー。カンボジアの場合はあれはインテリがほとんど粛清されたという国情のせいもあり、海外の学者がプロデ ュースしたんだと思う。そういう出来、そういうつくりでした。ガイジン向けテイスト。タイのはタイ人学者の手によ るもののようで、そこはかとな~いダサさは隠せない。
タイの美術品には木製が多く、クメール美術と違って石像物をほとんど残していない。インドシナ半島がインド文化の影響を色濃く受けて、クメール文明がコーチシナのあちこちに遺跡を残すような文明圏を誇った中世以降がタイの時代である。好みの問題ももちろんあるが、華麗で繊細な文化だが、圧倒されるような重厚さには欠ける。要は、スコタイもアユタヤもすんばらしーけどさ、アンコールワットにはかなわないと、単なる見物人はそう思うわけですよ。別にタイ文化やタイの歴史を貶めているわけではなく、単なる好みの問題で。
それと、新設の王室の歴史コーナーがでかくて詳しかったにもかかわらず、タークシン王が潮州系とか、前国王(現国王の兄)は寝室で銃殺死体で見つかったとかはゼンゼン触れられていませんでした。(当たり前か) 日本人の私の感覚だと「始まりがこれだけ最近やとありがたみが無いのう。」とも思ってしまう。だって徳川さまより新しいしさー。きゃー、ごめんなさーい。
川べりの市場をうろうろ。イカ足の串焼き、一串20B、パパイヤ一袋5B、ジャックフ ルーツ一袋8B。タクシーでTha Thienの船着場まで行って対岸のワット・アルン行き のフェリーに乗る。しかし、タクシー乗りやすくなったなあ。初乗り35B、以前だっ たら次の角まででもそんな値段じゃ行ってくれなかったよ。
ワット・アルンでは瓦を奉納した。一枚100B。ワット・アルンの塔は、私にはものすごく中国くさい印象がある。基壇に中語風のモチーフが使われていたり、周りに中国風の石像が配置されているせいももちろんあるが、それよりも全体にびっちりとはめこまれた陶器の使い方がタイくさくないのだ。タイの寺院建築では、色ガラスを平面的にびっちりはめ込んだモザイクが多用さ れるが、この塔は陶器やその破片を立体的にはめ込んでモチーフを形作っている。今回眺めているうちに納得がいったのだが、この陶器の使い方が、中国南方、特に福建南部から広東北部にかけての寺院建築の屋根の部分の装飾とよく似ているのだ。(広東の寺院建築は重厚で、また違った印象である。)
塔の横に、装飾の無い中国式の屋根を持つ回廊があり、木製の椅子が並んでいたのでさっそく座らせてもらう。風通しがよく、ゆっくりくつろいだ。昔々、まだとても若かった頃に、ここではないバンコクの別の寺院で同じように座り込んでいて、寺院で露宿しているらしき薄汚れた老婆が集まってきた野良猫にエサをやっているのを見て泣いたことを思い出す。野良猫はすべてなんらかの片輪だった。
当時私はある名で呼ばれていて、それは当時私が片思いを寄せていた男が、漫才師の名前から私につけやがったあだ名だったのだが、私はその名をとても気に入っていた。その名は中国語では宿無しを指す。そしてひとりの老婆が、私の実家の近くの小さな祠に白い犬と一緒に住みついていて、やはりその名で呼ばれていた。私はそれを運命の符号のように感じていた。つまり私は、遅かれ早かれ宿を定めぬ者になるのだと。
「自分が何者であるか、そしていったい何をしたいのかが判らず苦しむ青年期に、(苦しまない青年もいるが)、或る種の男たちは放浪の旅に出る。」
バンコクの老婆は白い犬の老婆と同じ顔をしていた。そのころの私は、自分がそこで年老いて最期を迎えてもいいと思える場所を探していて、そこではじめて、最初の候補地を見つけたと感じたのだ。せつなかった。そのとき同行していた親友のSは、声を殺して泣いている私を見てそっとその場を去り、私に私だけの時間を与えてくれた。彼女がその後彼女自身の事情で心を病み、負い切れなくなった私がこちらから連絡を絶ったのは、私が家族の誰にも告げずに日本を出た後のことである。日本を出るとき、船に乗る私を見送ってくれたたった一人の友人は彼女だったような気がするが、記憶は彼方で霞んでいて、もはや思い出せない。
彼女とは20代のごくごく初めに上海の安宿で知り合った。実は同じ大学で、向かいの研究室の学生だと知ったのは、知り合ってかなりたってからだった。彼女から借りたままの本は今も処分しきれずに私の本棚にあり、抜けない棘のように時折私を刺す。
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さて、アジアのケータイは便利ですね、日本以外。私のケータイはアジアのほとんどの国で使えます。で、ワット・アルンでまったりしながら、バンコク在住の友人に電話をかけた。彼女は所要でバンコク郊外にいたのだが、6時半にスクンビットのアソークでお待ちあわせ。本日は日本食を食べるのよえへえへ。私の「中華以外」、相棒の「タイ料理以外」という要求をすりあわせると、この選択が妥当だったのだ。日本人と中国人でインド料理屋でもないような気もするし。
そうと決まれば待ち合わせまでの時間を有効活用。フェリーで対岸まで戻り、鈍行フェリーでバンランプーへ。全くのお昼抜きというのもなんなので、安いご飯が大好きな私が主張して道端ご飯。私は筍と鶏のめちゃくちゃ辛いカレー、相棒はもやしとにらをあっさり炒めた唐辛子抜きのおかずの上に、焼き魚を載せてもらっていた。テーブルの上にあるのはタイ明治が発売している牛乳。金色のラベルの4.3牛乳がいちばんおいしい。
そしてタイマッサージ。二時間260B。でれでれになって出てくると、相棒が相棒がタイ式三角枕を買いたいという。サイアムスクエアで見たときは 1,000~2,000Bぐらいであったが、ここでは550B、500に値切って買いました。HK$100 ぐらい?じゅうたんと同じえんじ色にした。相棒は床にねっころがってテレビを見た いらしいです。
でかい枕をかかえ、身動きが取れなくなったのでタクシーで宿へ。待ち合わせはア ソークのウェスティンホテル。ロビンソンデパートメントが隣接しているというの で、早めに行ってぶらぶらすることにする。タクシーでサイアムまで、そこから BTS。ほんとはタクシーでアソークまで行くつもりだったのだが、死にそうなおじいさんの運転手がものすごい徐行運転で走るのでたまらなくなって途中下車。しかし数回タクシーに乗って大体の相場がわかった。これが後に役にたつことにな る。
ロビンソン。相棒が皮のサンダルが欲しいという。4年前にこれもやっぱりバンコク で買って、はいてはいてはきたおしたやつがもうボロボロ。600Bぐらいではきよいの がみつかり、相棒は満足そうであった。黒のモカシンも買っていた。900Bぐらい。私 も探してみたが、いい感じのはどれもこれも1,500~2,000Bぐらい。だったら香港と かわらないのでやめておく。香港は靴が安いのだ。
おまちあわせ。「単身赴任中に太った」と言っていたのでデブを探したが、相変わら ずタイ人とみまごうばかりにほっそりした女性が歩いてきた。この小柄な女性が、私 の知人の中で最も辛辣な女のうちの一人だとは、相棒はわかってないだろう。プ リックは小さいほど辛いのである。ホテル裏の日本料理屋へ。食った食ったよ食いま した。
友人Aは新婚早々決まった隣国への単身赴任を2年間で無事終了し、BKKへ帰って きたとたん今度はご主人が異動になり、結局入れ替わりに単身赴任していったのだそ うだ。不憫な夫婦である。飛行機代で金が貯まらんとぼやいていた。その孤閨を守る Aさんに相棒からリクエスト。女の子が踊ってるとこに行きたいんですと。それを歪 曲して、「花電車が見たい」と告げたのは私である。私が見たかったの。
(花電車ってなに?というお問合せを受けたので書いておこう。花電車とは、本来はパ レードの日などに路面電車がきれいに飾り付けをして、ゆっくり運行するのを言いま す。そこから転じて、「見せるだけで乗せない」芸、ストリップなどで女性の局部を 使った芸を指す隠語になりました。つまり、吹き矢を飛ばしたり、毛筆をはさんで字 を書いたり、ゆで卵を産んだり、りんごをいれて割って出したりする芸のことです。 大昔、サントリーが正月の新聞広告に使った「寿」の字が、実はこの芸を見た後で紙 をもらってきた開高健(当時宣伝部の社員)のいたずらだったという随筆を読んだこと があります。無茶しますね。)
さて友人Aはう~んとひと唸り。「長いこと行ってないから、上はともかく下までと もなると、今はどこがボラれへん店か分からん…」
そっかやっぱりボラれるか。「だって下まで出すのは非合法やから。」なるほど。で も行きた~い。無理難題。私たちのやり取りを聞いていた相棒が「如果不方便就不要 去ら」。自分でもよく言うフレーズなのだが、それをとっさにうまく訳せなくて困っ た。字義だけでいうと「不便だ」「都合が悪い」といった意味なのだが、この場合は しっくりこない。完全な訳に思い至ったのは帰港してからである。「もしアレ やったら別にエエし。」Does it mean "uncomfortable"? と聞いていたAさん、 つまりそういう意味だったんですよ。
結局友人Aが職場の人にまで電話をかけてくれた結果では、上だけ出す一階の安全な 店は教えてくれたが、下まで出す二階の店は危険だからと教えてもらえなかった。そ のとき私が考えていたのは、「とっときの場所はきっと惜しがって教えてくれないに 違いない。」 私という人間のさもしさがよくわかります。
「このへんにもソイ・カウボーイとかそういう店が集まる通りははあるんだけど、で もまあ、観光客だしパッポンに行きましょうか。」ということで、シーロムへ。香港 の女人街や廟街とほぼかわらん夜店を抜けて、「ボラれない」「安全で」「健全な」 Go Go Barへ。わー、きれいな女の子が香港で言う「三点式」の衣装で、カウンター の上で踊りまくってるー。てんごくみたいー。ぱらだいすー。
きわきわのビキニの女の子が棒につかまって腰をくねらせているのを見ながらクロス タービア。た、たまらん…。相棒に、「手ェ握るぐらいやったら怒らへんから、女の 子呼びなさい」と言ってやるも、「間違えて人妖(おかまちゃん)を呼んでしまったら と思うと怖くて呼べない…」とヘタレなことを言う。友人Aに見分け方を聞いてみ た。
「顔からは絶対見分けがつかない。体つきも実はアテにならない。確実なのは足のサ イズ。こればっかりは小さく出来ないから」 なるほど~。とは言うものの、この店 の女の子はみんなごっついハイヒールのロングブーツを履いていて、サイズが良く分 からない。結局ちょっとぽちゃっとめの女の子の番号を相棒に告げて、「あのコは ゼッタイ女の子やから」と何の根拠も無く断定してやった。そしたら相棒が言うこと には「ど、どこまで触ってええのん・・・?」それは妻に許可を求めているのか、店 の規定を聞いているのかどっちやねん。
これも友人Aに聞いてみた。「こういう店の建前は、すべては女の子の自由意志によ り決定される」です。だから、触らせたかったら触らせればいいし、お持ち帰りされ たくなかったら断ってもいい。この自由意志に基づく擬似恋愛システムが、若い年齢 層の白人男性に受けるんですね。」言われてみれば、客は白人ばっかりである。日本 人は?「日本人は普通、置屋に行く。そのほうが手っ取り早くて安いから。」なるほ ど。
擬似恋愛なあ。これほどあからさまな「選び選ばれる」場で、恋愛もへちまもない気 がするが、下半身に血が行ってしまった男性は阿呆である。
女の子を呼んだ。ストレートのロングヘアに小麦色の肌、八重歯のかわゆいマンゴー ちゃん。相棒を「弁当持ちでめし屋に入ってきた間抜け」にするのはか わいそうなので、私は友人Aといちゃいちゃすることにする。そしたらマンゴーちゃ んが私のことをすっごく気にしてくれるのだ。やっぱり接客業のプロなのだなあ。 「あなたはとてもCuteね」「あなたこそとってもcuteよ。だから席に来てもらっ たのよ」「でもあなたは色が白いわ」うーん。タイ人はみんなそれを言うなあ。(※ 他に誉めるところがないため) 「何か飲む?」「じゃあ、コーラを頂きます」 こ の飲み物代は彼女の収入になる。台上で踊って、客の席についているだけでは彼女た ちの収入はゼロである。客が飲み物を勧めてくれるか、連れ出してくれるかしないと 稼ぎにならない。気、付けよ相棒。
そしてトップレスターイム!じゃーん。台上の女の子がいっせいにトップをはずしました。さきっぽに星型とかハート型とかのきらきらシールを貼って隠しているのが余計そそります。おっぱいがいっぱいだあ。
気が付くと友人Aがビールに口をつけていない。「なんか水っぽくない?」私は全然 気が付かずにぐいぐいらっぱ飲みしていました。しかも二本目。友人Aは「前の客の 飲み残しに水を足して次の客へ」疑惑について言及したかったのだと思います。が、私 は目の前で踊る女の子に気を奪われて上の空。Aの真意に気が付いたのは、二軒目で Aが私の分もオレンジジュースを注文したときでした。しかし相棒はオレンジジュー スを返してシンハビアを注文しておった。
二軒目は水着じゃなくて下着。ブーツじゃなくてサンダル。あああ、かわいいなあ、 かわいいなあ、かわいいなあ。相棒に「女の子を呼びなさい」と女の子かそうじゃな いのかようわからんスレスレの子を指名してやって、私は友人Aといちゃいちゃする ふりをして女の子に見とれていました。するとどうでしょう。目の前で踊っていた白 い下着のかわいい子が好意的に誤解をしてくれたらしく、私の目をじっと見つめて微 笑みながら、下の布を膝まで下ろしてくれたのです。
うっわー。脳内オルガンが天上の和音をちゃらりらら~と奏でるとともに、 私の中の"野郎"がとんでもない勘違いをいたしました。「このコはボクのことが 好きなんやあ」 擬似恋愛システムの有用性について納得がいったのはそのとき です。そっか、こうやって誤解して行くのね。
しかし同時に私の中の女の部分が、キレイに手入れしてるなー、見習わんとアカンなー、と冷静に見ておったのも事実ですが。相棒に教えてやると、ヤツは席に呼んだ女の子に連れ出し費用のリサーチをするのに忙しく、全く見てなかったことが分かりました。わはは。タイミングの悪いやつだなあ。ちなみに最初は3,500Bだったのが話してるうちに2,000Bまで下がったそうな。この他に店に連れ出し代500B。時間が惜しければ上に部屋があり、使用料は45分で400B。この場合も店への連れ出し代は必要。
相場を知らんのでなんともいえませんが、思ったより女の子の取り分は悪くないです よね。友人Aが言うには、かわいい子で月30,000Bから50,000Bぐらいの収入になる とのこと。コンスタントに一晩一人の客がついてそのくらいかあ。一方、大卒の初任 給は10,000Bぐらいとのことなので、前々から私が思っている「購買力と物価を考え ると1B=HK$1ぐらいで考えると正解」の法則(長い)はだいたい正しそう。
とか考えていると、刺青だらけのマッチョな白人二人が隣のテーブルにつきました。 そのとたん、店中の女の子がそのテーブルに殺到。殺到しただけではなく、それぞれ が上をまくりあげたり下を下ろしてみたりして、この世にこんなにあからさまな誘い 方もあったのかというような客引き合戦を展開。擬似恋愛システムもなにもあったも のではありません。でもマッチョーズにしたら天国。客が女の子を選ぶと同時に、女 の子もポテンシャルな客を冷静に見極めているわけで、女連れで入った相棒はかわい そうでした。
女の子には名残が尽きないが、やかましくてしんどくなってきたのでスタバみたいなコーヒー屋へ席を移動。友人Aの近況を聞く。
先に書いたとおり単身赴任に出ているAのご主人の実家は、実はけっこうな田舎に ある。その実家で放し飼いの鶏を大量に飼ってみたところ、やけに順調に増えてし まった。しかし、鶏というのは意外と繊細な生き物で、雷が落ちただけでもビックリ して死んでしまうやつがいる。そういう鶏は病死ではないので最初は喜んで食べてい たのだが、飼ってる数が増えるに連れて、次第に家族と使用人では食べきれない量に なってきた。
そこで思いついたのがワニである(このへんがタイ)。ワニを飼ってエサにすればいい し、育ったワニも売れるし一石二鳥!(やっぱりタイ)。さっそく子ワニを購入してき て育てたところ、エサがよかったらしくみるみる大きくなって、檻が手狭になってき た。檻を増設し、移そうとしたのだがさあ大変、移送中に一匹が脱走。シャレになら んので探しまくったのだがみつからない。子供が襲われたりしたら大変なのでご近所 にも警告を発しまくったが、なぜか皆さんのんびりしてらっしゃる。どうも騒ぐまで もなく、とっくにご近所さんの腹の中に収まってしまっていた模様(さすがタイ)。そ してすっかりでかくなってしまったワニ、しかも90匹ぐらいがうじゃうじゃいるとい う(いくらタイでも…)。
「香港にワニ肉を売りさばけるようなマーケット、知らん?」即答が難しい問題だ。
しかしもう夜中です。友人Aは明日出勤、こちらも7時起床で空港なので、名残は付 きないがおひらきとする。お疲れ様でした。
風呂上りの私を見て相棒、「その体では一晩中踊っても客はつかんなあ。」 ほっとけ。