朝の検札時に、ウダイプル到着は何時頃かと尋ねる。昼の一時とのこと。5時間以上遅れてるなあ。
ゆうべ、クロークルームに荷物を預けるときに、仔ヤギを二匹預けようとしている人々がいて、おもしろかった。冗談で荷物預かり証をヤギの目の前でひらひらさせてやると、ヤギの持ち主が本気で慌てた。
列車には例によって勝手に床掃除の男の子が乗っており、掃除が終わるとケガをした脚を指さしながら掃除代を請求。とても哀れっぽい仕草だ。私達はいつもどおり小銭をやった。彼は脚を引きずりつつ次の客へ。ひと通り金を集め終わると、私達の向かいの空席に座った。多分どこに座っても歓迎はされないが、外人の私達はあまり邪険にしないからだろうと思う。
男の子は本日の稼ぎを一枚づつ数えだした。十数ルピーはあるだろうか。これで彼はこの日の食い扶持がなんとかなるのだ。手のひらいっぱいの小銭を数え終わり、彼は私達を見てにたぁと笑った。真っ白な歯がこぼれた。仕事は終わった。あの哀れっぽい仕草も仕事のうちなのだ。彼はただのコドモに戻り、外人相手にはしゃぎはじめた。周りのインド人たちはそんな私達をあからさまに不愉快そうに、険しい目つきで見ている。この子供の階層には分を過ぎた行為なのだろう。
相棒がタバコを取り出した。男の子相手にマッチを擦る真似をしてみせると、彼は待て待てという仕草をして、どこかへ去り、ほどなくマッチ箱を持って帰ってきた。相棒はそれを受け取り、50パイサを渡した。マッチはだいたい一箱50パイサなので。箱のなかにはマッチ棒が一本しか入っておらず、風のつよい車内でその一本はタバコに火を移す暇もなく消えてしまった。箱を男の子に返すと、男の子は50パイサを返してよこそうとしたのがなんとも微笑ましかった。もちろん受け取らない。
火もなく、一度くわえてしまった煙草を相棒が持て余していると、男の子はそれをくれとねだりはじめた。相棒が冗談で「2ルピーだ」と言うと、さっきの稼ぎから2Rsを取り出して本当に買おうとする。「おまえは小さすぎるからまだダメだ」と手真似で言ってやると、オレは小さくない!と背伸びをする。またマッチを擦る真似をしてやると、とび上がって探しに行った。その隙に、本当は持っているマッチで火をつけて吸い始めたので、またもやマッチを手に帰ってきた男の子は騙されたことを知って地団駄を踏んだ。そして「吸いさしでいいからちょうだいちょうだい」とねだりはじめたので、相棒は「子供はダメダメ」と、吸い殻を窓の外に放ってしまった。
それから男の子にお小遣いでもやったのかな。もう忘れてしまった。
ウダイプル到着は結局一時半、先に駅周辺で昼食を済ませ、翌日の夜行の手配に行くも、本日は日曜で窓口は2時までしか開いておらず、結局明日にもういちど足を運ぶことになる。
オートリクシャーでKunbh Palaceへ。運転手はコミッションを期待して5Rsでいいと言ったが、ホテルの位置をはっきりとは知っておらず、私達がホテルを見つけたのにそのまま行き過ぎてしまった。OK、歩いて引き返すからとリクシャーを降りて歩いて戻る。路地が狭すぎてオートは方向転換できず、運転手は歩いて追ってきたが結局そのホテルは満室で、運転手は諦めて帰った。すぐとなりのHotel Monalisaに入る。広い部屋にホットシャワー付き。前は木陰でテーブルと椅子があり、シマリスが20匹ぐらいうろちょろしているという天国のような環境。125Rsナリ。
荷物をおいて街に出る。今日は日曜なので王宮は休み、湖の周りを歩いて暑さにへとへとになり、水を飲んではへこたれる。ウダイプルは坂の多い街で、暑季に街をうろつくのは単なる愚か者だと思った。
夕食に、ホテルのレストランで30Rsもするトマトきのこピザを食べる。ウマイ。水分をたっぷり摂取して、本日は終了。