***このブログについて***

書き続けている日記のうち、旅行記をここにまとめておきます。右サイドメニューの「その他の旅行」から各旅行の目次に飛べます。サイドメニューの下のほうの「痩公胖婆400天渡蜜記」は、一年と少し(1996/03/31 - 1997/06/01)にわたった新婚旅行の記録の目次です。気が向いたときにぼちぼちあげています。

1996年7月4日木曜日

自転車を借りて草原へ

8時起床。本日は自転車を借りて草原へ行ってみることにする。ホテルで聞くと、「30分」。朝食をとった飯屋で聞くと、「2時間は、いらんやろう」。いったいどうやねん~。とりあえず走ってみることにする。45分過ぎてまだたどりつけんようであれば一旦停止することにする。走り出してから35分、草原についた。

草原にも門票(チケット)あり、一人一元。別にチケットがあるわけでもなく、門が有るわけでもないが、テントを張ってる蔵族に支払わねばならない。ここで相棒が余計な一言、「草原は国家のものだろう?」などとぬかしてけつかったため、テントのチベタンが怒って「草原は俺たちのものだ」と繰り返して言い、私は冷や汗をかいた。阿呆、相棒、周りの状況をよう見ぃっちゅうねん。こんな無人の草原で、無用のトラブルをおこしてどうするか。おまえは漢族でむこうは蔵族やっちゅうのに、わかってなさすぎじゃい。

漢族には自分たちが少数民族を抑圧しているという意識のない人が多く、また中国人は人種差別をしないということを平気で言う人がよくいてビックリする。意識がないというか興味がないのだろう。中華意識というやつだ。人民元に表記されてる5種類の文字、何族の何文字か聞いて答えてくれた中国人、まだ一人もいない。広西壮族自治区に住んでた頃、鉄道駅名のローマ字表記がピンインじゃなく、あとにzとか付いた不思議な表記になってるがあれはなんなのか、大学教授に聞いても答えられなかった。広西は壮族自治区であるため、あれはピンインではなくて壮語表記なのである。

とにかく、この世に人種差別をしない民族なんて存在しません。みんなします。しかしながら中国人はこのへん意識のない人が多く、いつぞや「香港人は人種差別をしない」と公言した香港人がいて、香港に住む外国人の私としては、あまりの発言に相手にするのもアホらしかった。「香港人はコスモポリタンだから~」ってなニュアンスでの発言なので、ちゃんちゃらおかしかったっす。バスや地下鉄ででインド人の隣の席が最後まで埋まらないのはナゼかとか、気がついてみたこともないのだろうか。「香港人特有の不用意なレイシストジョーク」という言い方を、アメリカ人がするのを聞いたことがあるので、私だけの感想ではなかろう。

ま、それはそれとして、私が「チベット人にああいうことをいうのはやめろ。彼らは「中国人」じゃないんだから。」と相棒に言うと、相棒「ここに住んでる限りはチベット族だって中国人だ。」だと。あ~あ、基本的な認識が違う。

「誰が好きで中国人にされてるねん」と言うと、「あいつらは野蛮だ」と全然違うことを言い出すので、「そういう言い方だったら中国人だって十分野蛮やで」と思わず言ってしまった。相棒はチベタンが人の見てる前で平気でのぐそをれるたとことかを見てずいぶんショックを受けててそう言うんだろうが、それは文化習慣の違いであって、中国人でもなくチベタンでもない私にとっては、青天下ののぐそも、ドアも敷居もないニーハオトイレも実はあんまりかわりません。そりゃ私だって、あちこちのぐそが落ちてる村(めし屋への行きかえりに必ず通るのだ…)を歩くのはやだし、現在進行形でのぐそをおたれになってる人々の横を通るのはもっとイヤだけどさあ。しかもあの人たち、用便後に紙なり水なりで始末をしている気配が一向に見当たらない。って観察するなよアタシ。

それより自分とは考え方とか常識とか違う人々がいるということを認めないことの方がよっぽど野蛮でしょうが。特に我々のように文化習慣常識を共有してないカップルにとってはそれってほとんど死活問題だと思うが如何。しかしね、文革の時にひとの民族の寺を破壊しまくって、でも宝物だけはキッチリ持って帰ったほうの民族が言っても、説得力ないよ、それ。

などなど、という話をぐじぐじする。景色のいい、空気の澄んだ、早春の野花の咲き乱れる高原を散策しながら交す会話ではない。

ま、しかし同時に、こういう教科書的な、いかにも元教師的な建前にとらわれずに、自分の感覚にもとづいてダメなものはダメと言えることも重要だとは思うけど。のぐそはやっぱりやめたほうがいいよな、公衆衛生上。だから漢民族も痰を吐くのもやめましょうね(<だいぶ減ったよね)。そして日本の酔っ払いどもよ、街中での立小便をやめなさい。

ぐじぐじ。草原は綺麗だった。チャリでチャリチャリ帰る。帰りは下りなので25分。

隣の部屋にドイツ人が入ってきた。スキンヘッドのドイツ人、でき過ぎやん。漢語ばつぐんにうまく、6年も北京に住んでいるという。香港人と日本人のカップルがなんで北京語で会話してるねんと聞くので、共通語がそれしかないからと答えると、彼のお姉さんがロシア人と結婚してて会話が英語なんだそうだが、それといっしょやなと言われてしまった。そういうものか。

雲南省からラサへのルートが今ふさがっているということを話していると、88年にそのルートは通ったことがあるとの話であった。昔は公安のチェックも甘かったそうだ。今回は夏河から合作を経由して南下、四川省へ抜ける予定だという。いい人である可能性1割、悪い人である可能性9割、話をする分にはおもしろい人であった。普通の人の可能性は無し。