***このブログについて***

書き続けている日記のうち、旅行記をここにまとめておきます。右サイドメニューの「その他の旅行」から各旅行の目次に飛べます。サイドメニューの下のほうの「痩公胖婆400天渡蜜記」は、一年と少し(1996/03/31 - 1997/06/01)にわたった新婚旅行の記録の目次です。気が向いたときにぼちぼちあげています。

1996年10月26日土曜日

大きな間違い…

私たちはなにか大きな間違いを犯したのではないだろうか。

飛行機が二時間弱で一万五千円相当。一番いいバス(カラオケ付き)が30時間で5000円相当。エアコンバスが同じく30時間で3500円相当。ノンエアコンが35時間で2300円相当。

そこで飛行機にのるつもりはまったくなく、かつカラオケの騒音を恐れた私たちはエアコンバスにのることにしたのである。朝10時発で、翌日の夕方4時に到着するという触れ込みだ。そしたらなんてことだろう。もうすぐ昼の12時半だというのに、私達はまだパダンでバスを待っている。なんでや?なんでこうなるんや???

一番いいカラオケバスはもう2代も出発してしていってしまった。カラオケを恐れ、かつ1500円ケチったためにあれに乗れず、こんなに暑くて臭くてハエがいっぱいのところで、じーっとテレビのインド映画を見ながら、いつ来るかわからんバスを待つなんて…。文房具店で見つけて跳びついて買った星の王子さまノートを旅日記にしたので、いいことをまっさきに書きたかったのになあ。

しかし1500円の差と書くと大したことはないように思えるが、二人で3000円→60000Rpsと考えると、数日分の宿代である。ケチりたくなるのも無理はないではないですか。そしたらこのざまなんだけど。

最大のミスは、我々はこのバスがPADAN始発だと考えていたことであった。席を予約できるバスだったから。オンラインシステムなんかあるわけないので、そう考えたくなるじゃないですか。しかしバスの様子を見ていると、おそらく我々の乗るバスはMEDANを起点とし、MEDAN→PARAPAT→BUKITTINGIと、Trans-Smatra-Highwayをフルに走ってPadanを通過し、Jakartaへ至るらしい。Padan-Jakarta間には大都市は無いから、ほぼノンストップで突っ走るのであろうという希望…。しかしPadanの前ではいくつもの街で止まり、食事をし、トイレ休憩を挟んで走ってくるのだ。

Medan→Paparatが4-5時間ぐらい、Paparat→Bukittingiが8時間ぐらい、Bukittingi→Padanが2時間だから、合計約15時間。プラス食事や何やらで16-17時間ぐらいというところだろうか。それが20時間になることもあるよ~ん、ということなんだろうな。あ~ああ、いやになっちゃうな~~~~、あ~ああ、おっどろいた~~~~~。

しかし冗談ではないのは到着時間のほうで、当初の目論見では夕方4時にJakarta到着、つまり明るいうちに、噂に聞く混乱した、巨大な、治安の悪い首都にたどり着く心づもりでいたのだが、バスを待っている現在すでに1時近い今、いますぐバスが来たとしても30時間語には夜の7時、すでに陽は落ちている。だけではなく、Jakartaでは夕方5時~9時ごろまでは世界最悪のBangkok並みのラッシュが始まるはずで、間違いなくそれに巻き込まれるだろうから、予定している安宿街への到着は運が良くて深夜の10時や11時頃になってしまう。下手すると真夜中を超えるやも知れず、しかもバスターミナルは市中心から12キロ離れているから移動はタクシーで、宿代より高くつくであろうタクシー代はまだいいとして、問題は安全である。

バスが来た。チケットをキャンセルして明日出直すべく、窓口で交渉している最中であった。すでに一時半だ。バスは思ったとおり私達をPadanまで運んできたやつと同じタイプのバスで、嗚呼!!!(天を仰ぐ)という気分であった。座席は湿っていなかったが、エアコンが入ると上から水が降ってきた。

2時、出発。実に4時間の遅れである。

以下の行程は悪夢そのものの体験であったので、非常にマゾヒスティックな気持ちで記録しておく。

バスは予想よりボロく、汚かった。窓は予想通り開けられないタイプ、いわゆるはめごろしというやつだ。エアコンをかけると同時に、上から水がボタボタボタっという感じで落ちてきた。結構な量だ。冷たいので、用意していたサロン(腰巻き用の布)を二枚、膝にかけて寝ようと、上の棚に載せてあったデイパックを下ろすと、なんてこと!!! 灯油か軽油のような匂いがして、油が中まで染み通っている。デイパックに入れていたサロンは二枚とも油でしっとり湿っていた。星の王子様ノートも表紙がしわしわに!このひどい油の匂いとともに30時間を過ごすのか…。うんざりと同時に、前後の客がたばこを吸い始めた。油を持ち込んでいる客がいる以上、危険であるのも当然だが、窓の開けられないバスでは換気も出来ないため、真剣に気分が悪くなった。おまけにリクライニングシートが壊れていて背を立てられず、これから30時間ずっと寝っぱなしなのである。

日が暮れた。夜、エアコンが次第に強くなり、油と水を吸ったサロンはどんどん私の体温を奪いだした。なにしろ冷たい強風が膝にもろに吹き付けてくるのだ。夜中に寒さで目覚めた私は、荷物からレインコートを引っ張り出して着込んだ。なんでバスの中で雨合羽…。

そうこうしているうちにいちばんいい「スーパーデラックス フルエアコン TV カラオケ リクライニング2-1シート エグゼクティブバス」がどんどん私達のバスを追い越してゆく。私達のバスが本当に30時間で到着するとしたら、あれは25時間ほどで済むのではないだろうか。ということは、あれの所要時間が30時間である場合、私達のこのバスは???